都市部の交通において、路面電車への回帰が言われています。
現在、路面電車が残っているのは、札幌、東京、広島、長崎、高知、富山などです。高度経済成長期に自動車交通の邪魔だと言われ、地球温暖化など考えられていなかった時代にあっては致し方なかったのかも知れません。
しかし、宇都宮でも話題となり、京都でも路面電車復活への声も上がってきました。
もちろん、彦根のような地方の小都市では、城下町特有の狭い道ということもあって、路面電車は夢のまた夢です。もちろん、近江鉄道ですら、存続の危機にあります。
しかしながら、高齢社会となり、高齢ドライバーの自動車事故の急増に対処するという点からも公共交通の問題をしっかりと考えなければなりません。
ところが、「高齢者」「交通弱者」という観点の中には、どうやら「健康な高齢者」は含まれていないようです。「病院への路線の確保」だけが焦点となり、「健康な高齢者」の移動手段という視点がないように思います。
「健康寿命」の延伸が大事であれば、そのような健康ではあるけれど、運転には自信がなくなった人たちに移動手段を提供するという考え方が必須ではないでしょうか。そして、人の集う場所としての公共建物などを利用して、そこを交通の結節点と位置づけてみることが大事だと思うのです。
例えば、まずはバスの小型化を進めます。40人乗りのバスではなく、20人乗りのバスを使用するのです。こうすることによって、イニシャルコストの削減を図ります。また、運転手の確保という視点からすれば、小型であることから人材発掘にも資すると思います。
交通結節点としては、文化プラザであり、大規模商業施設であり、市役所支所・出張所などが考えられます。もちろん、「場所」だけで考えるのでは結節点としての意味を持ちません。その場所に「人が集いたくなる魅力」がなければなりません。バス停のポールだけがあるのではなく、飲食できる場所・知識欲を満たしてくれる場所でなければなりません。そういう「場所」を結節点にするのです。
このようなプランづくりには彦根をよく知り、彦根人の行動パターンと観光客の行動パターンを十分に分析するだけの人材発掘が必要です。だから、よその例をコピペするようなコンサルタントに外注すべきではないのです。職員が目で足で見つけてくるのです。
ここではアウトラインのラフスケッチだけを描きましたが、「人がどのように暮らしていきたいのか」を考え、「そのために行政という縦割りではない型破りな公務員の出現」が必要だと思います。
バスを廃止するから「愛のりタクシーの利用を」というだけでは、本当に市民ニーズを捉えているのか疑問です。なにしろ、バスの利用者は病院へ行く高齢者だけではないことを認識することから始めなければならないでしょう。
このようなことを考える型破りな公務員の出現を期待しています。