6月臨時会(1日目)
住民投票条例制定を求める直接請求に基づく臨時会と合わせて、理事者側から「調停の申立について」という議案が上程されました。この議案はテレビでも報道されました、庁舎耐震化工事のいわゆる「裏合意」問題に端を発しています。
もう一度、庁舎耐震化工事についておさらいをしておきます。
2012年9月定例会に当時の獅山市長から耐震工事の詳細設計予算案が上程され、可決いたしました。そしてその設計図は2013年5月に完成の予定でした。
ところが、4月に行われた市長選で、獅山候補が落選し、大久保市長が就任しました。そして9月定例会で耐震工事の見直しを発表しました。その理由は「財政問題」でした。当時、約29億円だった見積金額が大きすぎるということでした。
大久保市長は有識者による検討委員会を設置して、耐震工事の工法を獅山案の「一般耐震工法」から「制震工法」に変更(約3.6億円費用増加)することとし、その分、庁舎裏の県有地も取得せず、そこに建設予定の立体駐車場も建設せず、更には増築規模も約6分の1に縮小する案を議会に提案しました。
しかし、駐車場不足やワンストップサービスを求める声とともに、増築面積が少ない(前面の1階建を増築する)ことで2階以上は現庁舎に施す「ブレース」という部材が丸見えになるという問題もあって、市長が提案する案には議会はことごとく反対をいたしました。だから、建築費がそれなりにかかることは承知していたことになります。なぜなら、「制震工法」を認めた段階で、単純に獅山案よりも4億円以上かかることは分かっていたわけです。
そして、2015年秋に議員全員による特別委員会において、4つの案(A案〜D案)のうち「D案」を委員会が採用し、前進するものと思ったのです。ところが、2016年春に熊本地震が発生したにもかかわらず、同年秋に議会に提案した債務負担行為の額は約32億円で、それはD案の見込金額とほぼ同額だったのです。熊本地震のみならず、東京五輪の影響もあって、工事請負金額が増加するのではないかと心配していたのです。
その後、条件付一般競争入札が行われ、5月18日に開札されました。ところが、市長が予め定めた予定価格(上限)は約29億円(税抜)であったため、応札した2社ともに41億円であったため、再入札を行ったのです。
しかし、工事業者が40億円以上と見込んだものが、10億円以上下がると考えた市側の判断も常識外れですし、そもそも、D案(熊本地震前)の金額が約32億円だったことを前提とすれば、熊本地震や東京五輪がなかったとしても問題のある価格設定だったと言わざるを得ません。
そして、このような不都合があったことが原因となって、いわゆる「裏合意」が行われて、彦根市始まって以来の百条委員会が設置され、現在その調査が進んでいるところです。
さて、このような経過を辿った工事請負契約は5月に工事が中断したままとなっています。この工事の合意解約と出来高の精算をするために調停を申し立てる議案が上程されたのです。
しかし、議会前の全員協議会において「詳細は改めて提出する」と言いながら、全員協議会と全く同じ文書を提出し、調停をどの裁判所に申し立てるのかも決まらないままに提案されたところです。しかも、調停という手段が「透明性と適法性を確保するため」など、本当に調停手続きを正しく理解して提案されたとは到底思えません。
調停というのは、場所は裁判所で行いますが、あくまでも話し合いによって譲り合った上で決着をつけるものであって、調停の中身は「非公開」ですから、「透明性」の主張は全く違うのです。
質疑に立った4人のうち3人は積極的にこれらの問題点を突きましたが、納得のいく答弁はありませんでした。討論では反対議員が積極的に登壇しましたが、賛成議員からの討論は1人でした。しかしながら、採決では賛成16、反対7と、討論の人数とは違う結果となりました。
この後は、7月10日に2日目が行われ、住民投票条例についての質疑、討論の後、条例が制定されるかどうかの結論が出されます。6,000人を超える市民の皆さん。是非とも7月10日午前9時からの本会議を傍聴いただき、市長の答弁、各議員の討論、採決を確認いただきたいと思います。